日本の伝統的な技、茅葺き屋根とは?
現代でも地方の集落や人気の古民家でみられる「茅葺き屋根」。
この歴史は、瓦屋根よりもはるかに古く、まさに日本の伝統の技です。
今ではすっかり見かけることの少なくなってしまった茅葺き屋根ですが、日本を代表する屋根の一つであることは間違いありません。あの有名な白川郷も、世界遺産として認められています。
今日は日本が誇る屋根の伝承、茅葺き屋根から、現代の日本の屋根まで、屋根の歴史について学んでみたいと思います。
目次
1.茅葺き屋根とは
茅葺き屋根とは、草で葺かれた屋根の総称です。
狭い意味には最もよく使われるすすきで葺かれた屋根を指します。
じつは、「茅」という植物は存在しないことをご存知でしょうか?
茅とは、屋根を葺く草の総称のことで、茅の材料には、すすきの他に葦(ヨシ)、かりやす、かるかや、しまがや、ちがや等のイネ科の多年草が使われます。
2.茅葺き屋根の歴史
茅葺きの屋根は古くから日本全国、北海道から沖縄まで、住宅に限らず社寺等のあらゆる建物に用いられてきました。古代の住居(倉)の形式を伝えるといわれる、かの伊勢神宮の屋根も茅で葺かれています。
その歴史は古く、縄文時代になると人々は、永住的ではないれけども、狩猟や採取の拠点として定住的になったため、所謂、竪穴式住居に住むようになります。その屋根材料として、すでに茅葺きは使われていました。正確に言うと草葺きという表現になりますが、工具である打石器使って茅を刈ったり、木を伐ったりして茅葺屋根を築いたとされています。茅葺屋根は、まさに日本の住まいの原点といえるでしょう。
3.茅葺屋根のかたち
葺屋根のかたちの種類には
- 寄棟造り
- 切妻造り
- 入母屋造り
の3つがあります。また、ちょっと変わったかたちにかぶと屋根というものもあります。
世界文化遺産の岐阜県白川郷と富山県五箇山の合掌造りは切妻造りで作られています。これは江戸期から明治にかけて屋根裏を養蚕場として利用してきたためで、もとは寄棟だったと推測されています。
4.茅葺き屋根の特徴
茅葺き屋根には優れた特徴があります。代表的な特徴には
- 吸音性
- 断熱性
- 保温性
- 通気性
があります。茅葺き屋根の家に一歩入ると、その静けさに驚ろかされます。重厚な茅が音を吸収し、共振も少ないので、とても静かな室内となるのです。
茅葺きのすぐれた断熱性は、豪雪地帯でも実証されているように今さら語るまでもありませんが、それが通気性も兼ね備えている点が、夏は涼しく、冬は暖かいという茅葺き屋根の大変素晴らしい特徴です。
現代のあらゆる建築材料と技術をもってしても茅葺きの持つ吸音性・断熱性・保温性・通気性を兼ね備えた屋根をつくりあげることは 簡単ではありません。自然の力と、洗練された日本の職人の技がどれだけ素晴らしいかよくわかりますよね。
一方で、最大の弱点は火事。一度火の手が上がってしまうと、鎮火は容易ではありません。なすすべもなく大火事になってしまうのがとても弱い点です。
5.茅葺き屋根の葺き替え
茅葺きの葺き替えにはには
全面的に葺き替える「丸葺き」
屋根をいくつかに分割して葺き替える「分割葺き」
痛みのひどい部分に少しずつ差して補修する「差茅(さしがや)」
の3つの方法があります。
茅葺き屋根の葺き替えは、昔は村人の相互扶助による共同作業で行われましたが、今では一気に労力を集めることは困難になってしまいました。そのため、現代では茅葺き職人に頼らざるおえないのが現状です。
その上、材料となる茅場の減少で、茅の材料の確保が難しくなってきています。茅葺き屋根は定期的な吹き替えが必須になりますが、職人の高齢化や後継者不足などで葺き替えが困難になり、茅を屋根から下ろしてしまうこともあるようです。また、手入れされずに放置されたままの茅葺き家も多く見かけるようになってしまったのも、悲しい現実です。
5.茅葺き屋根は意外とエコロジカル?
「茅葺き屋根の葺き替え」と聞くと、全部新しい茅で葺き直すと思われがちですが、実際は全使用量の1/4から1/3は古茅が再利用されているのを知っていましたか?茅葺きは意外とエコロジカルなのです。
茅葺き屋根というと、維持費にお金がかかりそうなイメージですが、現代の家屋でも一代で1〜2度の建て替えが普通になってしまったことを思えば、トータル的にみればむしろ安上がりなのかもしれません。
さらに、葺き替えで不要となった茅はすべて肥料として使え、鉄や新素材のように廃材が一切出さないとう点でも、とてもエコロジカルな住宅といえます。
6.現代の屋根への変遷
6-1.瓦屋根の台頭
現在でも多く見かける瓦屋根は、6世紀の仏教が伝来してきた頃、朝鮮半島からの輸入でした。
その頃の瓦は、平瓦とそれのつなぎ目を覆う丸瓦から構成されていて、今でも古い寺院ではこの瓦屋根の形が残っています。一般住宅に瓦が使われるようになったのはもっと後のことで、延宝2年(1674年)に創案されたの平瓦と丸瓦を一つにまとめた桟瓦(さんがわら)からと言われています。その後改良が加えられ、現代の形へと変化していきましや。桟瓦は軽いだけでなく、製造や施工のコストも抑えることができたため、一般家屋へ瓦屋根の普及が広まったということです。
6-2.新素材の開発
いまでは、瓦屋根よりもコロニアルやスレート材、ガルバリウム鋼板などが主流になってきました。
耐久性には瓦に劣る点もありますが、何より日本は地震が多いので、軽い屋根にすることは家を地震に強くするという点でとても重要になってきますよね。現代ならではの新素材が気になった方は、それぞれに長所と短所がありますので、ぜひこの他の記事も参考になさってください。
おまけ:日本にただ一つの茅葺き屋根の駅!
なんと日本にただ一つの茅葺き屋根の駅舎があるのをご存知ですか?
それは福島県にある「会津鉄道」の「湯野上温泉(ゆのかみおんせん)駅」です。
茅葺き屋根に興味が出た方は、ゆったりと温泉旅行のついでに、日本唯一の茅葺き屋根の駅舎を訪ねてみてはいかがでしょうか?きっと話題になること間違い無しです!
まとめ
いかがでしたか?日本の伝統の技、茅葺き屋根について色々な発見があったかと思います。
日本の職人さんの技術は、世界に誇れるとてもすばらしいものですよね。
世界遺産にするだけでなく、後世にまでこのエコロジカルな茅葺き屋根の伝統技法を伝えていくことが、わたしたち日本人が大切にしなければいけないことかもしれません。
現代の屋根を全て茅葺き屋根にすることは難しいですが、現在の家屋でも、適切な屋根のメンテナンスをすることで、家を長持ちさせることができます。
また、素材によっては断熱効果や遮音・防音効果を望める新素材もたくさん開発されていますので、リフォームの際はそういった点にこだわって素材探しをされるのもいいかと思います。素材選びに迷った時には、屋根のプロに任せるのが一番です。ご希望にぴったりの素材でリフォームプランを立ててもらえるので、気軽に問い合わせてみてくださいね。
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