意外と見落としがちな屋根の雪止め。
もちろん、降雪が毎年当たり前の地域では雪止めは最重要項目ですが、ほとんど降らない地域にお住いの方にとっては、雪止めの必要性を感じることは難しいと思います。
この記事では、屋根の雪止めについて詳しく追ってみたいと思います。
目次
1. 屋根の雪止めの必要性
雪止めとは、屋根人降り積もった雪が、解けて下に滑り落ちないように、屋根に取り付ける部材のことです。
1-1. 屋根の雪止めは雪の少ない地域こそ必要
雪止めというものは、降雪機会が少ない地域ほど、有効的に活躍します。
近年では、普段降らない地域でも予想外に大雪が降るということが度々見られます。
降雪地域では積雪対策が十分にされていまあすが、雪が滅多に降らないと認識されている地域については、積雪対策が不十分なお家が多いため、降雪した際には大きな被害に繋がってしまうことが多いです。
1-2. 雪国の住宅はあえて屋根に雪止めを設置しない
場所によりますが、降雪機会が多い地域では、雪止めを設置しているお家は少ないと言われています。
雪と言うものは、とても破壊力があり重たいです。
ですので、とてつもない量の雪が降りますと、雪止めを設置することで大量に屋根に溜まってしまうため、かえって住宅の負担になってしまうからです。
また、屋根に登って雪かきをする際、雪止めにスコップが引っかかり邪魔になってしまうため敢えて取り付けないご家庭もあります。
1-3. 雪止めの無い屋根の主な危険性
雪止めを設置していないと、場合によっては大惨事を招く場合があります。
【危険1】落ちてくる雪の存在に気づかず、そのまま雪に埋もれてしまう
雪に慣れていない地域でよく見られる事故なのですが、屋根から落ちた雪を雪かきしている最中に、足元にある雪に気を取られ、まだ屋根に残っていた雪が落ちて埋もれてしまったケースです。
まとまった雪は非常に重く、固くなります。ですので、その雪が上から落ちてくるとなると、場合によっては死に至ることもあります。
【危険2】隣家とのトラブルの原因になる
実際にトラブルになった例を挙げてみますと、ご自宅の屋根に積もった雪が隣家のフェンスに落ち、破損してしまったケース。
もちろん修理代は落とした側が支払いを請求されますし、何より隣人との仲が悪くなってしまう原因にもなり兼ねません。
一番恐ろしいのは、隣家の方や歩行者の上に雪が落ち埋もれさせてしまう場合です。
ケガをさせてしまうのはもちろん、最悪の場合、死に至ってしまったら大変な事になります。
【危険3】車などの損傷
屋根がない駐車場に車を止めている方や、外に室外機を置いているご家庭は十分に注意が必要です。
雪の重さが原因で、落ちてきた雪で車が壊れてしまったというケースも珍しくありません。
また、雨樋の損傷にも繋がる場合があります。
雪止めがないと、屋根から滑り落ちる際に、大量の雪が雨樋に引っかかってしまい、雨樋が外側に開いたり、外れることもあります。
積雪が少ない地域の人も、雨樋の損傷を防ぐ目的で、雪止めを取り付ける方も多いです。
2. 屋根の雪止めの種類と材質
2-1. 屋根の雪止めの材質
2-1-1.ステンレス
ステンレスは錆びないという意味を持つように錆びにくいのが特徴です。
2-1-2.アルミ
鉄よりも重量が軽いのが特徴です。
2-1-3.亜鉛メッキ
鋼材(鉄)の表面に亜鉛の合金層を作り、鉄よりも錆びにくく腐りにくいのが特徴。
2-2. 屋根の雪止めの種類
何種類かありますが、代表的なものをご紹介いたします。
2-2-1.アングル雪止め
屋根に取り付ける長い棒(雪止めのための金具)を、アングルで連結させます。
多くの雪を止めることが可能なため、羽根付雪止めでは止められない場合などに採用されます。降った直後の雪はもちろん、雪解け後期の小さな落雪までキャッチします。
(雪止め金具のみだと、隙間が存在してしまうためこのアングルを用いります)
2-2-2.羽根付き雪止め
桟木(瓦を留めるために、屋根の上に横に張り渡した角材)に、羽根付きの雪止めを取り付けます。
地域性を考え、適正な段数と金具をしっかり取り付けます。
降った直後や雪解け初期の落雪をキャッチ。
(屋根の状況によって、雪止め金具の取り付け本数は変わります)
2-2-3.扇型雪止め
スレートとスレートの隙間に入れて固定するタイプ。
2-2-4.雪止め瓦
瓦屋根専用の雪止め。瓦そのものが雪止めの形状をしている。
2-2-5.雪止めネット
屋根材と積雪の間に取り付けるネットタイプの雪止め。金具やアングルではどうしても防げない軒先1段目・2段目からの落雪をキャッチします。また、すべての屋根に最適で、また屋根に合った色を選ぶことができる為、外観を損なうことがない。
(特殊な工事のため、屋根材の種別や軒先(雨樋)等の現状を把握しておく必要があります)
3. 屋根の種類で変わる雪止めの種類と設置方法
雪止めは、ほとんどの屋根に後からの取り付け施工が可能です。
また、屋根の種類に合った雪止めが使用されます。
主な取り付け方法は、釘やビス・コーキング(ボンド)などでしっかりと固定するやり方です。
屋根 | 雪止め | 工事方法 | |
---|---|---|---|
カラーベスト屋根 | 扇型雪止め | アングル雪止め | カラーベスト材同士の隙間に金具を差し込む。その後、シーリングなどで固定。 |
縦葺き板金屋根 | 羽根付き雪止め | アングル雪止め | 長い金属棒の雪止めをそのまま屋根に取り付け、固定し完成。 |
横葺き板金屋根 | 羽根付き雪止め | アングル雪止め | |
瓦棒屋根 | 羽根付き雪止め | アングル雪止め | |
波型ストレート屋根 | アングル雪止め | ||
瓦屋根 | 和瓦用雪止め | 平板瓦用雪止め | 金具を使用する方法もありますが、瓦用の雪止めを使用するのが代表的。
普通の瓦と取り替えるだけで工事は終わります。 |
平板瓦用アングル雪止め | 洋瓦用雪止め | ||
瓦棒屋根 | 羽根付き雪止め | アングル雪止め |
瓦用雪止めに関しましては、取り付け位置の瓦を剥がしビスで固定します。瓦本体を浮かせて雪止めを滑り込ませて設置できるものなら、瓦を剥がさずに取り付けられます。
4. 屋根の雪止めの設置費用
屋根の形状・勾配・周辺環境によって金額はかわります。
また、新規工事・追加工事等の状況にも変わってきます。
今回ご紹介する料金はおおよその値段になっています。
4-1.スレート屋根
約7万円から10万円
4-2.瓦屋根(瓦タイプ)
約20万円から40万円
4-3.金属屋根(アングルタイプ)
12万円から15万円
※足場代などは含まれていません。
5. 屋根の雪止めを設置する際のメリット・デメリット
雪止めを設置する際は、メリットは何となく思いつきますが、デメリットはあまり思い浮かびませんよね。
むしろないようにも感じますが、色々なものにメリット・デメリットが付き纏うように、雪止めにもちゃんとあります。
5-1. 屋根の雪止めを設置するメリット
【メリット1】屋根から落ちる雪の量が減る
これはもう当然ですね。
雪止めの上の方の雪は落ちてきません。また、雪が急速なスピードで落ちてくることもありません。
【メリット2】あらゆる雪の被害から守れる
冒頭でも申し上げたように、隣家の敷地内に落雪し、何かを破損してしまったとなればわだかまりの原因にもなってしまいますよね。
また、物の破損で済むならまだいい方かもしれません。
人に怪我をさせてしまったなんてことになったら大変です。
取り返しのつかない状況になり兼ねません。
【メリット3】急な予想外天気でも焦らない・対応できる
最近では、予想を超える地域での降雪が当たり前のようになってきました。
降雪が少ない地域では、急な積雪に慌ててしまいます。
その為に不運な事故が相次ぎに起こってしまうのです。
そうならない為にも、事前に準備を施していた方が賢明です。
5-2. 屋根の雪止めを設置するデメリット
【デメリット1】屋根の重量が増える
確かに、雪止めを取り付けてしまうとその分重量は増えます。
しかし、元々降雪量が少ない地域でしたら積雪の重さまで気にしなくても大丈夫だと思います。
雪は降雪から2日から4日程度たてば解けて流れてしまいますから(2日から4日の間に激しい降雪がなかった場合)。
重量の心配よりも、取り付けていないときの災害の方が、問題点が大きいと思います。
【デメリット2】結露が発生して木材が痛む
屋根に雪が積もり冷えているのに対し、室内は暖かいため結露が生じます。これにより木材まで痛んでしまう可能性もあります。
【デメリット3】雪解け水が屋根材の隙間から中に入る
雪止め金具が付いている場所の下地が腐食してしまっているケース。
金具によっては、メッキの塗装が悪いなどの原因で腐りやすいものがあります。それが屋根にとんでもないダメージを与えてしまうのです。
【デメリット4】錆びやすい材質のものがある
金具の雪止めが錆びて、屋根に錆が飛び火する可能性があります。また、錆びてしまった金具をそのままにしていると、金具自体が落下してしまう恐れがありますので注意しましょう。
こういった表情が見られたご家庭は、塗り替え時に外してしまう方も多く、塗り替えが早まる場合もあります。
6. 屋根に雪止め金具を取り付ける位置
雪止めを取り付つける位置は意外と重要なポイントとなります。
下からお家の中心に立ち、屋根を見上げてみてください。
外壁の真上に当たる、軒先40cmから80cm程離れた位置が適切です。
軒先という部分は重みに非常に弱く、特に何の支えもない軒先は、常に重力の影響を受けやすい場所になります。よって、普段から重力の影響を受けている軒先は耐性がほかの部分よりも弱くなってしまうのです。
雪はかなりの重量がありますから、軒下に長時間雪があると痛みの原因になり、最悪の場合は軒先が曲がってしまうなどの症状も見られるようになってしまいます。
また、軒の下地部分に雪水が入り込みますと、その入り込んだ雪水が外気にさらされることにより凍結し、この症状を繰り返すことによって屋根材を支えている部分が腐食してしまうという自体になります。
7. 屋根に太陽光発電(ソーラーパネル)が設置されている際の雪止めの設置
太陽光が取り付けてあるお家でも雪止めを取り付けることは可能です。
しかし、雪止めを付けることによって、発電量が弱まってしまう場合があるのも事実です。
7-1. 賛否が分かれる太陽光と雪止めの設置
あまり降雪がない地域、または落雪位置が自宅の庭部分のみというご自宅では、発電量を重視するために、敢えて雪止めを取り付けない方もいらっしゃいます。
業者さんによっても、発電量を優先させた方が良いと思っている方も多いようで、この件については賛否が分かれています。
7-2. 雪崩のように落下します
確かに降ったとしても少量の雪でしたら、太陽光が取り付けてあるお家に限らず雪止めは不要だと思いますが、実は、太陽光が設置してあるお家の屋根に積雪し落雪した場合かなりの衝撃があります。
太陽パネルはとても滑りやすく、落雪の際には雪崩のように次から次へと物凄い速さで落下していきます。
7-3. 発電量が優先か雪止めを優先か
雪が降ったら落雪が凄いから気を付ける。
雪止めを取り付けない方は、ご自身で気を付けていれば良い話なのですが、仮にお子さんがいるご家庭では心配になりますよね。
個人的な意見としては発電量よりも雪止めを優先してほしいと思います。
7-4. 太陽パネルがあっても雪止めを取り付ける方法
太陽パネルが付いていない部分に取り付けることは可能なのですが、屋根によってその施工方法は変わります。
一般的な方法としては、パネル設置位置を軒先から1.5mくらい離す・軒先近くに雪止めを設置するという方法が用いられます。
雪止めの取り付けを希望なさっている方は、一度専門の業者さんに診てもらい、ご自宅に合った対処をしてもらいましょう。
8. 屋根の雪止めを依頼するべき業者
実は雪止め工事というものは、比較的簡単な工事な上、あまり儲からない工事と言われています。
新築時についでに取り付けるなどでしたら対応してもらえますが、雪止めのみの工事だと引き受けてくれる業者が少ないのは確かです。
しかし、雪止めは大切な役割を果たします。きちんと業者を選び、快く引き受けてくれるところを選びましょう。
9. 屋根の雪止めを自分で設置できるのか
上記でも申し上げたように、なかなか引き受けてくれる業者さんがいないかもしれませんが、だからと言ってご自身で雪止めを取り付けるというのはお勧めしません。
素人が屋根に登るのはとても危険です。ご自身が落下してしまう恐れがあります。素人が高いところに登りながら、スムーズに作業できるとはとても思えませんし、考えているよりも非常に難しいです。
また、慣れない人が工事を行うと、雪止め金具の取り付けが甘く、最悪雪止め金具ごと落雪してしまうなどの危険性もあります。
ご自分ではきちんと取り付け工事を行っているつもりでも、間違った方法で取り付けますと、屋根自体の破損に繋がる可能性もあります。
破損が原因で雨漏りが発生してしまった・屋根の立て付けが悪くなったなど。
そうなってしまったら、余計に工事期間や費用がかさんでしまいますので十分に注意しましょう。
10. 屋根の雪止め金具を付ける際の注意点
10-1. 雪止め金具に雪が凍り付いて巨大化する
元々降雪が少ない地域では滅多に見られない現象なのですが、雪止めは、雪が積もるたびに屋根から雪が滑り落ちてくるのを止めてくれますが、降雪が続き、屋根に雪が融けずに残るような日々が続くと大変です。
雪止め金具に雪が凍り付いてしまい巨大化することがあります。
そして、そのまま雪が降り続きますと、雪が屋根から落ちずに残って氷の塊が発達していってしまいます。
それが少しずつ屋根に回り込んで雨樋にまで氷がまとわりつくと雨樋が壊れてしまうという事態に発展してしまいます。
降雪の下の強大化した氷の塊やツララは、暖かい日が続くと屋根の表面に融けた水が少しずつ流れて、大きな氷が雪止め金具にくっついていられなくなり、ひび割れて一気に落下していきます。
年により降雪量が違いますが、雪が何日も降り続き、屋根の上の氷が巨大化した年は最善の注意が必要です。
10-2. 雪止めを設置すれば雪かきは必要ないと言う業者には注意
こちらも雪の量によってなのですが、雪止めがあるからって必ずしも屋根の雪かきが不要ってことはありません。
先ほども申し上げたように、雪止め金具に氷が出来てしまう時も少なからずあるためです。
氷が巨大化しますと雪の重量が増し、屋根への負担もその分多くなるためです。
適量な降雪が続いたときは、一度屋根の状況を確認し、雪下ろしをした方がいいと思います。
雪止めを付ける際は、そう言った注意部分もきちんと教えてくれる業者さんを選ぶことをおすすめします。
ここまで読むと雪止め金具の必要性について疑問を持つ方もいらっしゃると思いますが、雪止め金具に氷がまとわりついてしまう現象は、裏を返せば雪止め効果に優れている金具は、巨大な氷の塊が出来やすいかも知れません。
今ご紹介したお話は、降雪が続く・日当たりがない場所の雪止めなど、その時の降雪の量や、ご自宅の環境で症状が左右されます。
一度、ご自宅の屋根・雪止めについて把握することをお勧めします。
そして、いざ雪が降った際には、ご自分の屋根の弱点を気にしながら対策し、注意していくといいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
雪止めは実際に雪が降らないと実感が沸かない部位であることは確かです。
ただ、後回しにしていると大きな問題に発展しやすいものです。
落雪が原因でお家のどこかが破損してしまった・自分が、もしくはご家族がケガをしてしまった・近隣、または通行人にケガをさせてしまったなど、大きな事故に陥ってしまう前に対処が必要です。
降雪があったけど何の問題もなかった時は、幸せな偶然だと思ってください。
「雪止めはいらない」と迷うあなたも、きっと必要になります。
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