三州瓦ってご存知でしょうか?
古くから現在まで日本家屋に使用されている瓦。
三州瓦は、石集瓦、淡路瓦と並ぶ日本三大瓦の一つです。
全国の粘土瓦のうち、三州瓦のシェアは半数以上と最大規模の製造数です。
瓦屋根に興味がある方はぜひお読み下さい。
目次
1.三州瓦の歴史
三州瓦はその名の通り、三州で生産されている瓦のことです。
三州とは愛知県三河地方のことをいい、古くから瓦の産地として有名でした。
愛知県の旧国名、三河国では奈良時代から瓦が作られていたことが専門家の調査によって判明しています。
鎌倉時代には備前国で製造された瓦とともに東大寺の大仏殿に使わていたそうです。
瓦はとても重く運搬が大変だったため、利用する地域で焼いたものを使うのが主流でした。
江戸時代に入り、幕府は土蔵以外の建物に瓦を使うこと禁止してしまいました。
それはなぜかというと、当時は火事がとても多く、消火の際に瓦が落ちてきたら危険だからという理由からでした。
そしてこの禁令が解かれるまで60年ほどかかりました。
そこから少しずつ一般住宅にも瓦屋根が普及していき、三州瓦が江戸に出荷されるようになります。
そのようなことから、三州瓦が広がり始めたのは1700年頃と考えられています。
そして、明治時代に入り丈夫で長持ちする瓦屋根は急速に広がり始めます。
現在でも神社やお寺の屋根、住宅メーカーの住宅屋根などに幅広く使用されています。
2.愛知県三河市(三河国)で三州瓦生産が発達した理由
三州瓦は粘土で形成された瓦です。
三州瓦の中心生産地は矢作川の下流に位置し、そこから採れる粘土はきめが細かく高品質で瓦の原料にとても適していたのです。
また、その矢作川を利用し、船で三州瓦を各地へ運搬することができたのも生産向上の要因のひとつです。
しかしなんと言っても生産量を増やした一番の理由は、新製品の開発や新しい技術の導入などに積極的にチャレンジしていった姿勢だと思います。
2-1.フランス瓦への挑戦
明治時代、横浜の外国人居留地では洋館の建設ラッシュでした。
当時日本で製造されていた瓦は洋館に馴染む物が無かったため、フランス人のジェラールが横浜でフランス瓦の製造を始めます。
そして大正に入り、三州地方で日本人達も本格的にフランス瓦を手本にした瓦の製造に取りかかります。
開発当初は失敗の連続でしたが、努力の末、国内での三州産のフランス瓦の人気を上げ、海外に輸出するまでに成長していったのです。
2-2.S型瓦の開発
大正時代、スペイン産のスパニッシュ瓦が流行しました。
ここでも三州はスパニッシュ瓦の様式を取り入れて日本の風土に合わせた瓦を開発します。
開発当初の瓦はS字型をしていたためS字型瓦といいます。
2-3.トンネル窯の導入
トンネル窯とは、トンネルの形をした窯で台車に乗せた瓦の白地を一方から入れます。
トンネル移動の間に、余熱、焼成、冷却が行われもう一方から出します。
瓦製造の工程を連続でできるため大量生産が可能になりました。
3.三州瓦の特徴
3-1.耐久性
屋根は風雨や太陽の光などにさらされています。そのため屋根材の耐久性が重要になります。
三州瓦は高温焼成で製造されるためしっかりと焼き締まり、硬く強度が高い瓦になります。
3-2.耐火性
火事から家を守るには耐火性がポイントです。
1,100℃以上の高温で焼成される三州瓦は、建築基準法で不燃材として指定されています。
3-3.耐水性
家を雨から守っている屋根。ですから耐水性は必須条件となります。
釉薬瓦や塩焼瓦は陶器質なので雨水をほとんど吸収しません。同じ陶器質のお皿をイメージしてみてください。また、水はけがよく雨水を流しやすいような設計になっています。
3-4.耐寒性
気温が氷点下になるような地方では凍結による屋根材の損壊が起こらないような対策が必要です。
三州瓦は水分凍結による屋根材の損壊対策が設計されていて寒冷地方にも適しています。
3-5.断熱性
近年、温暖化が進み異常気象が深刻な問題となっています。そこで真夏の高温や、真冬の寒気を遮り室内温度への影響が少ない屋根材が求められています。
三州瓦は断熱性などの遮断性能が高く通気性も良いため四季を通じて快適な住まい環境を作ります。
3-6.防音性
金属系の屋根やスレート屋根に比べると三州瓦はほとんど音が出ません。音をシャットアウトしてくれるので雨音や周囲の騒音を気にせずにいられます。
4.三州瓦の弱点とは
4-1.色ムラがある
瓦の色ムラの原因は焼成温度の変化によります。
色ムラを味があると好む方もいますので、捉え方によっては三州瓦の長所にも変わります。
4-2.貫入
釉薬瓦特有の現象で、焼成する時に粘土と釉薬の収縮率の違いにより表面に細かい亀裂が発生する場合があります。
ですが、あくまでも表面のみの亀裂なので品質に影響は無いです。
4-3.ピンホール
釉薬の気泡や粘土に含まれる有機物などを燃焼すると釉薬瓦表面に小さいへこみなどが発生してしまう場合があります。品質に影響はありません。
4-4.赤錆
粘土に含まれる鉄分が瓦表面に出てきてしまった場合、雨水があたって赤錆が発生する場合があります。表面にのみ現れるもので、内部まで錆が浸透することはありません。
4-5.汚れ、コケ
ある程度年数が経った屋根や、周辺環境により苔が瓦に付着することがあります。
また、ホコリなどが付着して汚れてくると美観が失われていきます。
4-6耐震性
三州瓦は重みがある屋根材のため地震に弱いと言われています。
しかし、ガイドライン工法という優れた施工方法と耐久性の高い三州瓦を合わせると阪神淡路大震災クラスの地震にも耐えられるという結果が耐震実験により出ています。
5.三州瓦の製法の種類
焼成方法により4つに分類されます。
5-1.いぶし瓦
いぶし瓦は、焼成の最終段階で窯を密閉した状態にします。
窯の中に閉じ込められた窒素などで希釈したガスを瓦の表面につけ炭素被膜というものを瓦に付けていきます。
つまり、ガスによって発生した煙でいぶすのです。
炭素被膜は銀色でこの色がそのまま瓦の色になります。
ただ、表面の炭素被膜は年数を重ねると劣化し剥がれ落ち、変色していきます。
また、水が浸透しやすいため、塩分を含んだ水による塩害、寒さによる凍害等が起きることがあります。
5-2.釉薬瓦(ゆうやくがわら)
釉薬瓦は、粘土瓦の素地乾燥後に釉薬という焼き物の表面をガラス質にするうわぐすりを塗り、焼成します。いぶし瓦と違い、密閉した空間で焼成しません。
陶器瓦とも呼ばれ、瓦表面は陶器のように水分が浸透しづらいため長年美観を保つことができます。
釉薬種類によって様々な色を出すことが可能です。
5-3.塩焼瓦
別名「赤瓦」と呼ばれるように赤褐色の瓦です。
大正時代に現在のINAXが塩焼き製法の土管を製造しました。
三州では、この土管製造の技術を瓦製造に応用し塩焼瓦が誕生しました。
塩焼きとは、焼成の途中で複数回に分けて塩を投入し、熱で分解された塩がガスとなり化学反応によってガラス状のケイ酸ナトリウムの被膜を形成させる方法です。
ガラス状の被膜が表面の光沢さを作り上げます。
塩焼瓦の特徴である赤褐色は三州の粘土でないと綺麗な小豆色を出せず、また、塩焼の製造方法が難しいため塩焼瓦と言えば三州という地位が確立されました。
また、塩焼瓦は含水率が非常に低いです。そのため、凍害に強く寒冷地方での使用におすすめです。
6.三州瓦の種類をいろいろ分類してみた
三州瓦は製法、形、色様々あるため数多くの製品が出ています。そこで製法、形、種類、色について分類してみました。
【表】三州瓦一覧
製法 | 形 | 種類 | 色 | |
地瓦 | 役瓦 | |||
いぶし瓦
釉薬瓦 無釉薬瓦 塩焼瓦 |
本葺き | 平瓦 |
軒瓦 |
銀色(いぶし瓦)
赤褐色(塩焼瓦) 多色(釉薬瓦) |
丸瓦 | ||||
J形 | 桟瓦 | |||
F形 | ||||
S形 | ||||
スパニッシュ | 上丸 | |||
下丸 |
7.まとめ
今回は、日本三大瓦の三州瓦についてまとめました。
【日本三大瓦・石州瓦についてはこちらから】
【日本三大瓦・淡路瓦についてはこちらから】
日本家屋にはやっぱり瓦を使いたいというこだわりを持つ方は多いです。
三州瓦職人は挑戦と努力を繰り返し素晴らしい瓦を生み出しています。
そのため、日本風の家だけでなく洋館にもマッチするような瓦もたくさんあります。
本当にたくさんの製品があり、1000種類以上あると言われているため全てを紹介することはできません。
三州瓦を扱う業者に相談しお気に入りの種類を見つけてください。
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